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初級文法の復習が最善の学習方法

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すでに高校を卒業している学生を相手に英語を教え始めて半年。

9月中旬に行なった期末試験の採点と成績処理を終えて一段落したところなのだが、振り返って見ると思うようにいかないことばかりだった。

半年間の反省を込めて、失敗した点をまとめてみようと思う。

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当初の授業計画

学生の到達目標は実践的な会話であって文献の読解ではないので、スキットと数行の簡単な読み物だけのテキストを選定。

当初の予定では、スキットで会話練習したあとに別の場面設定を与え、読み物のなかの単語や辞書などをもとにアレンジさせることにしていた。

出てくる文法事項は中学校3年生から(せいぜい)高校1年生程度のレベルなので、うろ覚え程度でも頭に入っていれば作文をしていく過程で復習できるだろう。

授業中に作ったものをペアやグループで修正して発表、その上で間違いの多い箇所について簡単な解説を加える。

教員は基本的に喋らず、学生が自分(たち)の力で身につけていくというスタイルだ。

一方的に喋ったものを書き取っても勉強する習慣はつかないし、語学はわからないところを辞書や参考書で調べて覚えていくしかない。初級文法を知っている前提であれば、そういうスタイルを取るのが一番良いのだと考えていた。

単語テストの失敗

使用しているテキストに専門的な用語や中高の教科書に出てきにくい生活単語が多いので単語テストは頻繁にやってきたのだが、空所補充にするだけで正答率が大きく下がってしまうことがわかった。

テキストと全く同じ表現を出しているわけだし、範囲は見開き1枚(右側のページは練習問題)。

単語こそ見慣れないかもしれないが、高校2~3年生の教科書の読解素材ような複雑な構文は出てこない。

単文だし、品詞と基本文型さえわかれば何の問題もないはずだった。新米教員は頭を抱えてしまった。

初級文法が入っていない

読解素材を構文解析して日本語に訳して終了!というタイプの授業が非常に退屈だったという思いからそういう授業はやらないと決めていたのだが、どうやら完全に間違っていたらしい。

2回くらい進んだところで、完了相や受動態、不定詞に関係詞といった基本的な文法事項が入っていないということが明らかになった。

テキストに出てくる文法事項をおさらいしてから内容に入るというスタイルに改めることになる。

「単語がわからない」

「単語が難しい」「単語がわからない」「専門用語がわからない」…。この半年、こんな言葉を山のように聞いた。

多少ラテン系の長めの単語はあるけど、分解すればなんてことはない。

‘-ology’だから「〜学」的な意味の名詞、 ‘-ist’だから「〜する人」という名詞。そういう規則性を頭に入れれば覚えられるはずの単語しかない。あとは生活語彙。

実際、専門用語なんて言うほど多くないし、日常会話で使うような語彙ばかりなのだ。では、どうして「難しく」感じるんだろうか。

学習が進むにつれて、通常の学習者は一番初めに覚えた訳語と一対一の対応になっていないということを学習する。

日本語では青信号というけど、あれは ‘blue’ ではなく ‘green’。 ‘(the) blue signal’ と書いてしまったりする人もいるが、誤りだ。こういった間違いは、単語が難しいわけではなくて、単語を間違った方法で覚えてしまっただけ。

間違った方法で覚えてしまったのに、それに気づかず(あるいは気づかないふりをして)ごり押ししてしまうから、難しく感じてしまうのだ。

makeを「作る」と覚えてしまうと、使役動詞としての用法が出てきたときに詰んでしまう。その修正をしない限りは、理解不能なものであり続けるのだろう。

多義語も第一義でごり押し

一対一対応でしか覚えていないので、広い意味を持つ単語で躓く。

辞書を引けばいいのだけど、最初にノートに書いた訳語でごり押ししようとして、意味が通らないものだから頭がパンクしてしまうのだ。

blueと青は違うし、makeと作るも違う。runなんか、自動詞と他動詞でだいぶ訳語が異なるものだからわけがわからない(中心義から考えればそんなにおかしくないのだが)。

一対一対応で訳語を割り当てて、母語(日本語)の文法で再構成しようとするから意味不明な文になってしまうのだ。

英語の型を意識させることが先決か

ただ、英語の文法、英語の型。それを身につけないと、辞書を引いたところで適切な項目にたどり着けない。

名詞なのか、動詞なのか。名詞だとして、それは可算名詞なのか、不可算名詞なのか。可算名詞の時、その単語はどういう意味なのか。

外国語学習者は、そういう風に場合分けして覚えていかないといけない。

bookに ‘-ed’が付いているからこれは動詞の過去形(もしくは過去分詞形)。bookは名詞だと「本」だけど、動詞の時は? あ、「(〜を)予約する」だ。book (IO) DOで、book DO for IOのかたちでも使われるらしい。場合によっては自動詞でも。

場合分けした後で、基本的な例文を頭に叩き込む。納得できなければ、文法書や語法書(あるいは総合英語のテキスト)を参照したり、教員に質問する。(残念ながら)そうやって「型」を身につけていくほかない。

辞書も文法・語法書もよくできているものが多いので、(自分のレベルにあっていれば)自学自習でも納得のいく答えに行き着くはずだ。

来年度の計画

初級文法が危うい学生が多くを占めるという前提で授業計画を組むとなると、読解素材は完全に後回しだ。

基本的な文のかたちを身につけるということが最優先になるので、簡単な短文を提示した上で、別の単語を与えて少しずつ文を組み替える練習を積むしかない。

最初に例文John read a book.を提示、そして名詞novelを導入しJohn read a novel.を作る。さらに動詞writeを導入してJohn wrote a novel.を作るといったように。

外国語学習者である以上、幼児の言語発達ように喃語から1語発話、2語発話を経て完全文を作れるようになるといったことは起こらない(そうやって何年かかけて外国語の発話が徐々に「発達」する学習者を見たことがある人がいたら教えてほしい)。

やはり母語の言語知識をベースにして訓練していくことが大事なのだと思う。初級段階でこういう訓練を積むことなく難しい言語素材を扱おうとしても、それは無理な話だ。本当は、小中学校でこういう授業をやってほしいのだが。

関連資料

時間の関係でまだ読み進めることができていないのだけれども、ヴァカーリ『英文法通論:英語会話文典』(1931、丸善)のはしがきでは、中途半端な知識で「リーダー」(読解教材)を読むことよりも、文法の規則を覚え、繰り返し応用した適当な翻訳課題を少しずつレベルを上げながら練習することで系統的に学習することの有用性が説かれている。

「来年度の計画」として挙げたものは、『英文法通論』の練習問題を参考に考えたものである。

これもまだ読んでいないのだが、金谷憲(編著) 『中学英文法で大学英語入試は8割解ける! 』(2015年、アルク)という書籍もある。

学部生の頃に、金谷憲(編著)『教科書だけで大学入試は突破できる』(2009年、大修館書店)は少し眺めた記憶があるが、(専門ではないので)内容の多くは忘れてしまった。近いうちに読もうと考えている。

追記

このエントリの大半を書き終えた後で、大修館書店の雑誌『英語教育』2017年10月号に「教養英語」の特集があることを知った。

執筆されているのは、今年亡くなった上智大学名誉教授の渡部昇一氏に(おそらく)ゆかりのある方々なのだろうが、暗記の効用や「訳文から原文を復元する」学習法(=復文)などが語られている。

世の中では「文法よりコミュニケーション」と言うけれども、それってどうなのよ?と思う英語教員の方々にとっては納得のいく話も多いことだろう。

そういえば、筆者は中高時代は予習の段階で教科書の英語を全文和訳して、(授業の大半は寝ていたが)訳文を修正しつつ、訳文から原文を思い出す方法で学習していた。

大学に上がってから(分量の多さが原因で)やめてしまったけれど、あれは確かに有益な学習法だったと思う。(最近英語力が落ちてきたから時間を見つけてやってみようかな…)

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TAK

予備校の英文法の授業が面白かったというだけで英語学の勉強が出来る学科に進路変更してしまった英語講師。早稲田大学教育学部卒業、上智大学大学院博士前期課程修了。高校と専門学校で非常勤講師をしています。中高教諭専修免許(英語)を所有。

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