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学期末を見据えた授業計画を立てたい

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筆者の現在の勤務校は9月下旬に前期の定期試験があるため、このところ試験問題の作成に追われている。

担当しているクラスは2つ。事前に聞いていた情報をもとにテキストを指定したはずが、実際には中学校で学習する文法事項が危うい状態だったために授業の大幅な組み替えを余儀なくされた。

初年度だったとはいえ学生の学力に合わせた授業を組めなかったことが非常に悔やまれる。

それに加えて、指定したテキスト(あるいは進め方)が悪かったことで試験問題を作成するのに十分な素材がなく、それがまた試験作成者である筆者の首を締めつづけている。

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「実践的な会話」の闇

1年生から順番に文法事項を学習できるように編まれている中高の検定教科書とは異なり、高等教育機関や専門教育機関で使われるような英語の教科書の多くは(既習であるはずの)文法事項を前提に作成されている。

高等学校を卒業して受験を突破しているわけだから、時制や態くらいはできていると考えてしまうのは当然だ。

実際、クラス分けテストの結果「英検3級〜準2級レベル」で集まっているのだから、そのくらいは覚えているものと思って授業を組んでしまった。

「オーラルコミュニケーションI・II(現在の指導要領では英語会話)くらいのレベルで専門用語を含んだものを使えば役立つだろう」くらいの軽い気持ちで。

時制や受動態も危うい

実際に現場に立ってみると、学生(の多く)は時制や受動態などの基本的な文法事項で躓いてしまっていることがわかった。

概念として知ってはいるが、実際に使うことができない。

単語テストで訳語を選ぶことは簡単にできるのに、前後関係から形態素(時制・態・数など)を補って書く設問を作ると正答率が大きく悪化する

上級者でもケアレスミスはあるだろうが、一貫して誤答していることから文法事項が頭に入っていないのだと確信した。

「単語がわからないんです」

学生に「この問題、どうすれば解けたかわかりますか?」と問うと、きまって「単語を覚えていれば解けたはず」「単語がわからなかった」と返ってくる。

しかし純粋に単語の知識を問う設問はできている。

やはり、自己分析ができていない

学習というのは、何でもそうだろうが、自分が何がわからないのかを認識できなければ先に進めないものだ。わからないことが明確になれば、やるべきことは自ずと見えてくる。

彼らに必要なのは、「英語の型」を身につけること。「型」が身についていなければ、単語を覚えようとしても覚えるべきことが多すぎて頭がパンクしてしまう。それでは、苦手意識が出て当然だ。

「英語の型」といっても、そんなに難しいことではない。中学校3年間で仮定法を除く基本的な文法事項は(ほぼ)全て習っているはずだ。

高校に入ってからの新出事項というのはそれほど多くない。単語数が増えて、文が少し長くなっただけだ。だいたいのことは、中学校の教科書を復習するだけでいい。

文法事項が頭に入っていれば、覚えるべき知識量が減る。

どうして文法事項を取り出して勉強するのかといえば、それは外国語学習を効率的に行うためだ。言語獲得装置がアクティブな時期の乳幼児は周りの会話(1次言語データ)を入力にして母語の文法を組み立てることができるが、ある時期を過ぎた人々は「外(国)語」1として学習するしかない。

「赤ちゃんのように」習得することはできないのだから、基本的な文法事項を押さえた上で効率的に学習してほしい。

読解パートで躓く

「実践的な会話」を意識した教科書とはいえ、筆者が採択したテキストは語彙を増やすためか会話文に加えて簡単な読み物が付されている。

どんな教材でもそうだろうが、会話文よりも読み物の方が文法事項の難易度が(必然的に)上がってしまう。関係詞の元の位置が深く埋め込まれる、いわゆる連鎖関係代名詞だとか、そういうものを平気で使ってくるのだ。

英語の文法を勉強すればそんなに難しいものではないのだが、単語を逐語訳で覚えただけのひとは、ワーキングメモリーの問題かわからないが、パンクしてしまうらしい。

文の構造を教えたあとで確認しても躓いてしまうようなので、より簡単なところからステップバイステップで積み上げるようにしていかないといけなかったようだ。

小テストは単語だけでは不十分

筆者が学生の英語力に合わせた授業を行えなかったのは、小テストの作りが甘かったことが大きい。

単語の空所補充を(英→日、日→英の)逐語訳で書かせていたから文法事項が入っていないことに気づけなかったのだ。

空所の前後関係から品詞を識別して埋めるような問題を作っていたらもう少し早く気づけていたはず。そう思うと、後悔の念が絶えない。

次にクラスを受け持った際には、学生の理解度を正確に認識した上で授業を組み立てていきたいと思う。

文法事項を意識したテキストが欲しい

中学校で学習した文法事項が危ういクラスを受け持ってみると、高等教育機関や専門教育機関で使われる教科書にも、文法事項をステップバイステップで復習できるようなものがあってほしいと思う。

見本を取り寄せた範囲では1つだけそういうものがあったのだが、文法と簡単な会話しかなかったことから採用を見合わせた経緯がある。

文法事項に制限を加えた読解の素材を載せたものがあれば、次に受け持つクラスで採用したい。

  1. “mother tongue”の訳語として「母国語」というのが相応しくないように、”foreign language”の訳語として「外国語」は相応しくないように思う。言語圏の境界は国家の境界とは一致しない。前者の訳語は「母語」とされるべきだというのは定着してきたようだが、それと同時に、後者も「外語」あるいは「異語」と訳出されるべきではないかと考えている。
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TAK
TAK

予備校の英文法の授業が面白かったというだけで英語学の勉強が出来る学科に進路変更してしまった英語講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、上智大学大学院外国語学研究科博士前期課程修了。高校と専門学校で非常勤講師をしています。最高学位は修士(言語学)、中高教諭専修免許(英語)を所有。専攻は理論言語学。

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